計量と洗米は美味しいおこめへの分かれ目

今回は「計量」と「洗米」についてです。
今までこの連載で触れたこともありますが、ごはんを美味しく炊き上げるまでにはいくつかの分かれ道があります。その分かれ道で正しい選択をすることが美味しいごはんへの近道なのです。今回は美味しくごはんを炊き上げる上で大きな2つのポイント、「計量」と「洗米」についてご紹介します。

計量は「体積」ではなく「重さ」で量る

お米は生鮮食品ですが、他の生鮮品と違って購入してから保管するまではお米に触れることは無く、「計量」の段階で初めて手に触れる、つまり「調理」の段階になるのです。そんな計量において一番大事なことは「重さ」で量ることです。
店舗でのオペレーションを目にすると計量の方法として2つの全く異なる「量る」があることに気付きました。それは「体積で量る」のか、「重さで量る」のかの違いです。

「体積で量る」とは?

言葉にするとなかなかイメージが湧きにくいかもしれませんが、店舗のオペレーションでは計量する時間を短縮する目的であったり、平準化するためのオペレーションのために「カップ一杯」であったり「所定のお皿一杯」といった「容器のサイズに合わせる量り方をしている店舗を目にします。
しかしながら、この「体積で量る」ことは米屋の視点ではあまりおすすめできません

その理由として、米粒の大きさは厳密に言いますと品種により異なります。
そのため同じ体積でも重さが同じとは限らないのです。
一般家庭用の炊飯器で炊く場合はもちろんそこまで大げさな話ではなく誤差の範囲とも言えます。
しかしながら、店舗用の大型の炊飯器で行う場合は家庭用ではあまり問題ならなかった誤差が看過できない大きさになる可能性もあります。
また、お店によっては無洗米を使われているお店もあります。
無洗米だとなおのこと体積で計ると誤差が生じる可能性が高いです
その理由として無洗米は通常の白米よりもさらに削られていますので同じ体積であっても米粒の量は多くなっているのです。
以上のことからお米は体積で量らず、「重さで量る」ことをお勧めします
当然浸漬時の水の量も重さで量ることになります。

「現代に沿った洗米方法」

次に洗米です。
ご存知の通り昔はお米を「研ぐ」と言いましたが、最近では「洗う」と言います。
さらに昔は「研ぎ3年」といわれるくらい技術が必要とされていましたが、誤解を恐れずに申し上げますと現代では「いい加減」で良いのです。その理由は3点あります。
1)精米機の性能向上
昔は精米機のパワーが今よりも弱かったので白米でも糠がまだ残っていました。
そのぬかを落とすためにお米を「研いだ」のです。
ところがいまは精米機のパワーが上がっているので、キレイに糠が落ち切っている白米が多いのです。

2)糠に対する考え方の変化
昔ほど「糠をキレイに取りきったお米=白ければ白いほど美味しい」という図式は成り立っていません。その理由として、お米の成分理解が深まったことが挙げられます。

お米の糠層と白米の間には亜糊粉層(あこふんそう)という層があり、実はそこには旨味が詰まっていることが分かったのです。力いっぱいお米を研ぐことにより、その層を取りきってしまうことは、結果としてお米の味を落としてしまうのです。

3)品種改良による粘りの増加
昔のお米は今ほど粘りが無かったので、力を入れてお米を研ぐことにより、わざと米粒を割って、ごはんを柔らかくするという目的が洗米にはありました。
今は粘りがある品種が多く、この目的は不要となりました。

以上のような理由により、お米は「研ぐ」のではなく、「洗う」で良くなりました。
では「研ぐから洗う」になった現代における洗米方法4ステップをご紹介します。

美味しく炊ける洗米4ステップ

①  第1回目洗米
1)ボウルいっぱいに水を貯めて、そこにお米を入れます。これによりお米に衝撃を与えずに済み、お米が割れるのを防ぎます。
2)お米の高さまで水を減らし、素早く5秒かくはんし、水を捨てます
ポイント1:良い水を使う
最初の段階に触れる水をお米は最も吸い込みます。出来ればこの第1回目の水は良い水(浄水やミネラルウォーター、ブリタなど)を使います。

ポイント2:素早く行う
この作業を素早く行うのは、ぬか臭さをお米に戻さないようにするのが理由です。
かくはん方法は、手を広げて指を立て(ソフトボールを持つように)かくはんするといいでしょう。

②  第2回目洗米
お米の高さまで水を入れ、10秒ほどかくはんします。
※第1回目と違い、ここから先の洗米の目的はお米の糠層、特に油脂を除去するために行います。

ポイント3:冷たい水を使う
洗米は冷たい水で行いましょう。
冷たい水を使う理由は、低い温度から炊飯をスタートさせた方が「アミラーゼ」というでんぷんを糖化させる酵素が活発に動く温度帯が長く続くからです。16度以下が理想です。(以下3回目の洗米も同じように冷たい水で行いましょう。

③ 第3回目洗米(最後)
第2回目と同じくらいの優しさでかくはんします。時間も同じです。

ポイント4:水は程々に濁っているのが良い
水の濁りは「旨み」でもあるので、あまり透明になるまでは行わないことがポイントです。その一方、あまりに水が濁っているとコゲの原因にもなるので、注意しましょう。
※油がまだ浮いていたら、もう一度だけ洗米してみましょう。

④ ざる上げ
洗米が終わったら3分ほどざる上げをして余計な水分、ゴミ、不純物を取り除きます。
ポイント5:ざる上げは3分
あまり長時間ざる上げしていると、米粒の割れにつながりますので注意が必要です。

【まとめ】

毎日必ず行っている「量る」と「洗米」を見直すことで美味しさが変わるのではないでしょうか?是非今日から試してみてください。

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一般社団法人ジャパンフードクリエイティブ協会
お米スペシャリスト 小池 理雄(こいけ ただお)
1971年東京・原宿生まれ。渋谷区神宮前育ち。小学校時代から家業である小池精米店の手伝いをしながら育つ。
明治大学卒業後、出版社に入社し編集者として勤務。その後、社会保険労務士の資格を取得し、人事制度コンサルティングファームに入社。
2006年、小池精米店を継ぐ。それまでの社会経験を生かし、新しいお米屋さんのあり方を常に模索している。渋谷・原宿地域で唯一の「五ツ星お米マイスター」